Builder.ai破綻で露呈、偽AIと投資過熱への警戒が必要です。
「AIが自動でアプリを作ってくれる!」そんな夢のような話に、Microsoft、ソフトバンク、カタール政府までもが騙された。2025年5月、総額640億円を調達し「AIのユニコーン企業」として華々しくデビューしたBuilder.aiが、まさかの破産申請。その裏に隠されていたのは、なんと700人の人間がせっせと手作業でコードを書いているという、現代版「オズの魔法使い」のような衝撃の真実だった。
Builder.aiは「ピザを注文するのと同じくらい簡単にアプリが作れる」という触れ込みで話題になった。同社の売りだった「Natasha」というAIアシスタントは、まるで魔法のように利用者の要望を聞いてアプリを自動生成してくれると宣伝されていた。
ところが蓋を開けてみれば、実際には約700人のインドとウクライナのエンジニアが深夜まで必死にキーボードを叩いて、一つ一つ手作業でアプリを作っていたのだ。まさに「AIの皮をかぶった人間」である。
実はこの問題、5年も前から業界内では噂になっていた。2019年にアメリカの有名経済誌ウォール・ストリート・ジャーナルが「Builder.aiのコードって人間が書いてるよね?」と暴露していたのだが、同社は「AI企業」の看板を下ろすことなく、投資家からお金を集め続けていたのである。
技術だけでなく、お金の面でも嘘をついていた。Builder.aiは2024年の売上を「220億円です!」と投資家に報告していたが、実際には55億円程度。なんと4倍も盛っていたのだ。2023年も同じく、「180億円稼ぎました」と言いながら実際は45億円だった。
これはインドの会社と組んで「お金をぐるぐる回して売上を作る」という古典的な手口を使っていたらしい。2025年に新しい社長が「おかしいぞ?」と調査したところ、この大嘘がバレてしまったというわけだ。
Builder.aiが破綻したのは、実はAI業界全体がお祭り騒ぎになっているからでもある。2024年のAI関連企業への投資額は、なんと15兆円を超えた。これは前年より80%も増えている計算だ。
世界中のお金持ちや投資会社が「AIに投資しないと乗り遅れる!」とばかりに、まるでお祭りのようにお金を注ぎ込んでいる。全世界の投資資金の3分の1がAI企業に向かっているというから、その熱狂ぶりがわかる。
特にすごいのが、ChatGPTで有名なOpenAIが40兆円の価値があると評価されたり、他の企業も数千億円単位でお金を集めているところ。2025年の4〜6月だけで、16社が700億円以上を調達し、それが全投資額の3分の1を占めたというから驚きだ。
要するに、ほんの一握りの「選ばれし企業」に投資が集中し、その他大勢は資金調達に苦労するという、極端な格差が生まれているのである。
Builder.aiの事件は氷山の一角だった。2025年2月に行われた調査によると、「AI第一の会社です!」と宣伝している1200社のうち、なんと40%が本当はAI技術を全く使っていないことが判明した。さらに25%は、単にChatGPTのようなサービスを借りてきて、見た目だけ変えただけだった。
つまり、10社中4社が「AIの看板に偽りあり」ということになる。これはもはや詐欺レベルの話である。
さすがにこの状況を見かねて、アメリカ政府も動き出した。2024年、連邦取引委員会が「AIで武器を探知できる」と嘘をついた会社に制裁を科した。また、AI関連の裁判も2023年の7件から2024年には15件へと倍増している。
「AI、AI」と騒いでいる会社の多くが、実は中身がスカスカだということがバレ始めているのだ。
投資のプロたちも、この状況に警戒感を示している。あるベンチャーキャピタルの幹部は「問題はお金が多すぎることじゃなくて、そのお金が間違ったところに行っていること」と指摘している。
別の投資家は「みんなChatGPTみたいな基本技術にばかりお金を突っ込んで、実際に使えるアプリを作る会社への投資が足りない」と批判している。要するに、「技術オタクには投資するけど、実用的なサービスには投資しない」という本末転倒な状況になっているのだ。
業界の将来について、専門家たちは衝撃的な予測を立てている。「2026年までにAIスタートアップの99%が消える」というのだ。
理由は簡単。ほとんどの「AI企業」が、実は自分たちで技術を開発しておらず、ChatGPTなどの既存サービスに依存しているだけだから。本当に革新的な技術を持っている会社は、実はほんの一握りしかないのである。
Builder.aiの破綻で一番困ったのは、同社のサービスを信じて使っていた中小企業やスタートアップだった。ある日突然「もうサービス使えません」と言われ、アプリもウェブサイトも全部使えなくなってしまった。
しかも、自分たちのデータやプログラムのコードにもアクセスできなくなり、一から作り直すしかない状況に。これは事業にとって致命的で、中には会社の存続自体が危うくなったところもある。
この事件をきっかけに、「SaaSエスクロー」という仕組みが注目されている。これは、万が一サービス提供会社が倒産しても、顧客のデータやコードを保護する仕組みのこと。今後、こうした「保険」の重要性がますます高まりそうだ。
Builder.aiの破綻が教えてくれるのは、AI業界が「技術への過度な期待」と「お金の集まりすぎ」という危険な状況にあるということ。世界には7万社を超えるAI企業があるが、本当に革新的な技術を持っているのはごく一部だけ。
新しく作られる会社の4社に1社がAI企業という異常事態は、明らかに過熱しすぎている証拠だ。投資家たちも「AIブームに乗り遅れるな!」と焦って、十分な検証をせずにお金を出しているケースが多い。
多くのAIツールが似たり寄ったりなのは、実際には問題を解決しているのではなく、「AIっぽく見える」ことを重視しているから。本当に価値のある技術と、見せかけだけの技術を見分ける目が、今まで以上に重要になっている。
Builder.aiの事件から学ぶべきことは明確だ。「AI」という言葉に踊らされず、本当にその技術が役に立つのか、ビジネスとして成り立つのかを冷静に判断することが大切。
投資家だけでなく、AIサービスを使う一般企業や個人も、「本当にAIを使っているのか」「突然サービスが止まったらどうするか」を考えておく必要がある。
AI技術自体は確実に進歩しており、2024年の調査では78%の企業が何らかの形でAIを活用している。問題は、実体のない「偽AI企業」を排除し、真に価値を創造する企業を見極めることだ。
Builder.aiの破綻は終わりではなく、AI業界がより健全で成熟した段階に進むための重要な節目となるだろう。投資家、開発者、そして私たち消費者も、この事例から学んで、次の「偽AI企業」に騙されないよう警戒心を持ち続けることが大切である。
基本対策と補助金活用で、町工場を低コストでランサム被害から守れます。