生成AIの値下げが止まらない理由と、価格が下がるほど差がつく自動化力について、実際にオーパス5.5を使いながら気づいたことをまとめた。AI導入を検討する経営者・担当者向け。
先日、私は日帰りで大阪まで行ってきた。移動の間もずっと考えていたのは、AIがこれだけ賢くなった時代に、なぜわざわざ足を運んでまで人に会う必要があるのかということだった。答えはシンプルで、AIに置き換えられない部分は結局「人と人との関係」でしかつくれないからだ。オンラインで済ませられる打ち合わせは山ほどあるのに、それでも直接会いに行くことには、効率だけでは測れない意味がある。この感覚は、今回のAIの値下げの動きを見ていて、さらに強くなった。
オーパス5.5が出た。これまでAnthropicの最上位モデルだったFableを性能で上回ってきたというので、実際に使ってみたが、確かに速いし賢い。ただ、私が今回本当に驚いたのはそこではない。普通、性能が上がったモデルが出ると、利用料金も上がるのが当たり前だった。ところが今回は逆で、Fableより賢いはずのオーパス5.5のほうが、コスト感としては安く使える。これは今までの常識からすると、かなり異常な事態だと思う。
しかもこれはAnthropicだけの話ではない。GPTの側でも同じように値下げの動きが出ているし、Geminiも速くて安いモデルを出してきている。賢いモデルが増えているのに、価格は上がるどころか下がっていく。この流れが続くなら、AIにとにかく大量の資金を投じてきた側からすると、投資を回収できるのかという疑問も当然出てくる。実際、そうした見方があることを、今日会った相手との話の中で聞いた。バブルが終わりに近づいているのか、あるいは知能の伸びそのものが頭打ちになりつつあるのか。どちらにしても、今のうちに感じ取っておく価値のある変化だと思う。
Anthropicでは最下位モデルであるHaikuの新しいものが出るという噂もある。Haikuは応答が速い分、これまではFableやオーパス、Sonnetに比べてアウトプットの質が落ちるとされてきたモデルだ。そこをあえて強化してくるということは、各社が「速くて安いモデル」を必要としている証拠だと私は見ている。単価をどんどん上げていく方向ではなく、逆に下げてでも使ってもらう方向に舵を切っているように見えるからだ。
背景には中国のモデルの存在も大きいと思う。安くて性能の良いモデルを出す競合がいる以上、価格を高く維持し続けるのは難しい。皮肉な話だが、この点については中国の存在に感謝したい気持ちすらある。今後どうなっていくにせよ、価格が高止まりしにくい状況が続くのであれば、使う側にとっては悪い話ではない。
以前の私は、AIの利用料金がこのまま高くなり続けたら使えなくなる人が増えるはずだから、自前でローカルAIの環境を組んでおいたほうがいいと考えていた。ところが、安くても充分に賢いモデルが手に入るようになってきた今、その前提は崩れつつある。わざわざ自分でローカルの環境を構築しなくても、アメリカ発のモデルが安く使いやすい形でAPI提供してくれるなら、そちらを使うほうが理にかなっている。
もちろんGPTとClaudeのどちらを使うべきかという質問もよく受けるが、私の結論は「どちらでもいい」だ。正直、どちらも頭の良さとしては相当なレベルに達している。私自身はコーディングにはGPT、事業の自動化まわりにはClaudeという使い分けをしているが、これは好みの範囲であって、優劣の問題ではないと思っている。ただ、新しいモデルが出た直後はとても賢く感じるのに、使い続けているうちにだんだん体感が悪くなっていくことがある。これは何らかの形で調整が入っているのではないかと勘ぐりたくなるくらいで、今使っているモデルを妄信せず、常に情報を更新していく姿勢が必要だと感じている。
値下げの話をしていて、私がもっと重要だと思っているのは、コストそのものより「使いこなせているかどうか」の差だ。今日会った規模の大きな会社でも、AIを使わなければいけないという意識は強く持っていた。ただ、実際に何に使っているかを聞くと、資料作りや相談相手としての利用にとどまっていて、業務そのものを作り変えるところまでは踏み込めていなかった。これは特別な例ではなく、こうした会社は続出しているというのが私の実感だ。
ここに価値の分かれ目があると思う。今のAIを使えば、パソコン上のほとんどの業務は自動化できるところまで来ている。人間がやることは、最終的な確認だけでいい水準に近づいてきている。だからこそ、どこをどう自動化するかを設計できる人材の価値が上がっている。3人でやっていた業務を1人でこなせるようにする、といった変化を実際に作れる人が、これからの会社にとって重要になる。
実際、その日訪れた会議室でも、担当者がAIに下書きをつくらせた資料を見せてもらったが、そこには手直しの跡がびっしり残っていた。文章は整っているのに、数字の根拠や社内特有の言い回しがずれていて、結局は人がすべてを読み直して直す前提になっている。私はその場で、どの工程なら確認なしで任せられそうかを一緒に考えてみたが、担当者自身が自分の業務の流れを言葉にできていないことに気づかされた。AIへの指示は、業務を理解している分だけ具体的になる。逆に言えば、業務理解があいまいなままでは、どれだけ性能の高いモデルを使っても、出てくる結果はやはりあいまいになってしまう。
自動化を突き詰めていくと、これがとても難しい作業だということが分かってくる。AIを使ってウェブサイトをつくる、簡単なゲームをつくる、というのは比較的すぐにできる。ただ、自分の業務を自動化するとなると話は別で、自分の仕事をシステムとして理解した上で、どこにAIを組み込むべきかを判断しながら作業を進めなければならない。AI自身も、こちらの業務を知らなければ何を自動化すればいいか判断できない。だからこそ、自分の業務を正しく理解し、それを言語化できる人にしか、本当の意味での自動化は進められないと思う。
私自身、自社の請求や日報の処理を自動化しようとして、最初に組んだ仕組みをまるごと作り直した経験がある。最初のものは、自分がふだん頭の中でやっている細かい判断を書き出せていなかったせいで、AIに渡しても半分くらいしか正しく動かなかった。結局、自分の手を動かしながら「ここで何を見て、何を基準に判断しているか」を一つずつ書き出し直してから、ようやく形になった。この作業は地味で時間もかかるが、省略するとどれだけAIの性能が上がっても意味がないと痛感した。
私自身も、この自動化を自社の中でどんどん進めている最中だ。1つのAIに1つの指示を出して終わり、という使い方よりも、複数のAIを組み合わせて構造をつくるほうが効果は大きい。例えばコーディングを1つのAIに任せ、その内容を別のAIにレビューさせるといった形で役割を分けると、ミスが減っていく。今のAIのエージェントはある程度自律的に動いてくれるが、その上でどういう構造を組むかという設計そのものが、これからの差になっていくと私は考えている。
安いモデルが手に入るようになったからといって、何も考えずに使い続けるだけでは差はつかない。むしろ単価が下がった分、以前より気軽にいろいろな用途に試せるようになったからこそ、どこに使うかという判断の質が問われるようになったと感じている。値段を気にして使う範囲を絞っていた時期から、使う範囲は広げつつ、どこに集中投下するかを考える時期に変わってきたということだ。この判断ができるかどうかが、これから半年、1年で会社ごとの差として表れてくると私は見ている。
このあたりの「自動化をどう設計するか」「複数のAIをどう組み合わせるか」という部分は、正直かなり泥臭い作業の積み重ねになる。AI駆動研究所では、こうした自動化の設計や運用を実際の業務に落とし込むための研修をいくつか用意している。
自動化を担う人材そのものを育てたい会社には、FDE研修が向いている。業務理解とAI活用を組み合わせて、自分たちの手で自動化を進められる人を社内に増やすための内容だ。組織全体の仕組みとしてAI活用を設計し直したい場合は、AI組織OS研修で、業務フロー単位での見直しを扱っている。また、Claudeを使った自動化や事業活用を軸にしたい会社には、Claude研修も用意している。
どれが合うか分からない、まずは自社の状況を整理したいという場合は、無料相談から話してもらえれば、今の業務のどこから自動化を始めるべきか一緒に考える。値段が下がっていくAIをただ使うだけでなく、それをどう組み込むかを設計できるかどうかで、これからの差はかなり大きくなると私は見ている。
この内容は動画でも話しています: https://youtu.be/PB_SbpfEwlQ
LandBridgeAI Coachingは、AI駆動開発で開発コストを10分の1に削減する実践型研修プログラムです。従来1,000万円以上かかっていた開発を100万円以下で、6ヶ月の期間を1ヶ月に短縮した実績があります。座学で終わらず実際の成果物を作りながら学び、内製化まで支援する唯一の研修です。15年以上のシステム開発実績を持つ弊社だからこそ提供できる、即戦力となるAI活用スキルを習得できます。孫正義氏や南場智子氏が予言する「AIがコーディングする時代」に備え、今こそ企業の競争力を劇的に向上させるチャンスです。