フォーバル GDXリサーチ研究所が大学生を対象に行った調査で、DXを進めていない会社に対して学生の就職意欲が大きく下がることが分かりました。DXは「重要」なだけでなく「必要」と答える学生が多数派になり、生成AIを使いこなす日常が企業に求める水準を引き上げています。採用で選ばれる企業になるには、DXとAIの活用を分かりやすく示すことが欠かせません。
「御社はDXに力を入れていますか」。就職イベントで学生から投げかけられる質問が珍しくなくなっています。フォーバル GDXリサーチ研究所が2025年7月に実施した調査によると、日本の企業にDXが必要だと考える学生は67.1パーセントに上りました。さらに、DXに取り組んでいないと分かった企業には過半数の学生が「志望度が下がる」と答えています。生成AIが学習や生活のあらゆる場面に入り込んだ世代は、働く環境でも同じようにデジタルが使えることを求めます。採用で選ばれたい中小企業は、この意識変化を前提にDXを進める必要があります。本稿では調査データを軸に、学生の本音と企業が今すぐ取り組むべきことを整理します。
調査に協力したのは、國學院大學、皇學館大学、中京大学の学生です。DXの重要性について聞いたところ、「とても重要だと思う」が37.9パーセント、「ある程度重要だと思う」が39.1パーセントで、合わせて8割近くが「重要」と答えました。「重要ではない」と回答した学生はゼロでした。学校生活でもオンライン授業やクラウド教材が当たり前になったいま、デジタルが仕事にも必要だと考えるのは自然な流れだと言えます。
DXが日本企業に必要かという問いに「必要」と答えた学生は67.1パーセントでした。100パーセントに近い数字ではありませんが、学生の3人に2人が「DXは不可欠」と考えている計算です。もし企業がDXを進めていないと知った場合、43.5パーセントが「志望度は下がるが他の条件も見て判断する」、9.9パーセントが「志望度が大きく下がり応募をためらう」と答えました。少なくとも半数以上の学生が気持ちを萎えさせることになります。せっかく注目してくれた学生の心をつなぎ止めるには、DXを「やっている」と言える状態にしておくことが採用の入り口になりつつあります。
学生から見ると、DXを進めている企業には「新しいツールを試せる」「仕事の効率が上がる」「学び続けられる」というイメージがあります。つまり、DXへの姿勢は会社の成長性や働きやすさを測る指標になっています。採用サイトや会社説明会でDXの取り組みを伝えるときは、導入ツールの名前を羅列するだけでなく、社員がどう便利になったのか、どんな課題を解決できたのかを短いエピソードで語ると伝わりやすくなります。
調査では生成AIの利用状況も確認しました。「よく使っている」が37.3パーセント、「たまに使っている」が45.3パーセントで、8割以上が日常的に生成AIを活用しています。ChatGPTやGeminiなどのサービスを使うことで、調べものの速度が上がり、課題の下書きやアイデア出しも手際よく進められると実感している学生が多いことが分かりました。
生成AIの利用目的で最も多かったのは「分からないことを調べるため」で72.2パーセントでした。従来の検索エンジンよりも素早く答えにたどり着けるので、学習の効率化が進みます。次いで「レポートや課題の下書き作成」が57.1パーセントとなり、文章作成の一歩目をAIに任せるスタイルが広がっていることがうかがえます。他にも、アイデア整理や趣味の研究など、学生生活のさまざまな場面でAIが活躍しています。
この世代が入社したときに求めるのは「慣れたツールを安心して使える環境」です。AIを使う上でのルールやセキュリティの考え方、個人情報の扱いなどを明文化しておけば、新入社員も迷わず活用できます。新人研修で社内のAI活用事例を共有したり、社内ガイドを用意したりすると、学生が持つスキルをすぐに戦力化できます。評価制度のなかにも「AIを使って改善した取り組み」などを盛り込めば、デジタルに積極的な人材のモチベーション向上にもつながります。
フォーバル GDXリサーチ研究所の平良学所長は、学生の期待値に対して企業のDXやAI活用が追い付いていないと指摘します。中小企業が採用で不利にならないためには、まず自社の取り組みを整理し、伝わりやすい物語にすることが大切です。どの部署でどんな課題をDXで解決したのか、社員がどんな変化を感じているのかを具体的に紹介すると、学生は自分が働く姿を想像しやすくなります。
次に、社内の体制を見直します。経営層が方針を示し、現場にはデジタルに明るい人を配置し、必要であれば外部パートナーにサポートを依頼します。生成AIなど新しいツールを試すときは、少人数での検証から始め、使い方のコツや注意点を全社に共有すると定着しやすくなります。社員が気軽に質問できる窓口を設けるのも効果的です。
採用活動と社内DXを切り離さず、学生と話して得たヒントを社内の改善に生かすサイクルをつくります。例えば、説明会で学生が「AIツールを使いたい」と話していたなら、社内でも同様の環境を整えます。内定者フォローでDXの取り組みを紹介し、入社後も継続的に学べるプログラムを用意すれば、企業文化としてデジタルが根付いていきます。フォーバルが提唱する「Green × Digital transformation」の考え方を取り入れ、環境配慮とデジタル活用の両面を伝えることで、サステナビリティに敏感な学生にも響きます。
学生の67.1パーセントがDXを必要と考え、DXに消極的な企業からは半数以上が離れていく――この調査結果は、採用戦略をアップデートする強いメッセージです。生成AIを日常的に使う世代は、入社後もデジタルで働ける環境を期待し、学び続けられる場を選びます。中小企業が採用で選ばれるには、DXとAI活用を社内で進め、その姿を分かりやすいストーリーとして発信することが不可欠になります。フォーバル GDXリサーチ研究所のデータをヒントに、自社のDXロードマップを見直し、生成AIを含むツール環境の整備や社員教育を一歩ずつ前進させてください。
LandBridge AI駆動研究所では、DX推進計画の策定から生成AIの業務実装、社員研修までを支援しています。学生世代が期待する働き方を実現したい企業は、ぜひお気軽にご相談ください。 -> https://www.landbridge.ai/contact
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