IT業界への転職は、AI時代の今はおすすめしない。保育士の姉からIT企業に移りたいと相談を受け、システム会社を経営する私は止めた。キラキラに見える業界の中で、AIを使うほど仕事が増え、労働時間も減らない現実と、AIの知識を活かすならどこか、システム会社が向かう先を書いた。転職を考える人と経営者向け。
この記事の要点
ある日、姉から急に連絡が来た。姉は保育士をしている。IT×保育の分野でプロダクトを作っている会社に、転職したいという相談だった。
会社の名前も聞いた。SaaSを手がけている、私も知っている会社だった。聞いた瞬間に「え?」と思った。
正直に言うと、少し苛立っていた。弟の私がシステム会社をやっているのに、よくIT業界に行きたいと言ったな、と。その夜は気持ちを整理するために、外を歩きながら考えていた。
結論から言うと、私は「絶対に行かない方がいい」と答えた。
IT業界がこの先どうなるのか、2〜3年後の姿は誰にも分からない。ClaudeやChatGPTがここまで進化して、システム会社をやっている私にも見えていない。
毎日最新を追いかけて、AIを何時間も動かし続けている。それでも、この先も仕事があるのかと心配している。同じ業界の人の多くが、同じ不安を抱えていると思う。
保育士は、人がやらないと成り立たない仕事だ。そこからわざわざIT業界に来るのは、私個人としてはやめた方がいいと思った。
保育士が大変なのは分かる。私も元々は警察官だった。その場に行かないと仕事にならない、体を動かさないと進まない。その大変さは身をもって知っている。
ただ、外から見えているIT業界と、中の実態はかなりかけ離れている。そこを伝えたいと思った。
IT業界は、外から見るほどキラキラしていない。
昔は「ITイコール超ブラック」と言われていた。それがコロナの頃から、キラキラしたエンジニアやリモートワークのイメージに変わった。
私自身、そのイメージに強く憧れていた。家で仕事ができるリモートワークがいいな、とずっと思っていた。
実際にIT業界に転職して、リモートワークができる環境にはなった。柔軟に働けるのは本当だ。
それでも、思い描いていたようなホワイトな世界ではなかった。今の状態を一言で言えば、ナチュラルブラックだと思う。 誰かに強いられるのではなく、やらないと置いていかれるから自然と働いてしまう。
多くのシステム会社が、同じ状態なのではないか。ホワイトなIT会社は、もう無いと私は思っている。
これからの勝負は、知力と気力を振り絞って、どれだけやりまくれるかになる。特にIT業界はそうだ。
私は効率化が好きで、自動化の仕組みを組むことを日々やっている。それでも、やることはめちゃくちゃ多い。
AIがあるから、これだけの範囲を1人でこなせてしまう。だから忙しくなっている面もある。ただ、それぐらい動かないと先がない業界になってしまった。
フルフレックスで働くキラキラしたリモートワーカーは、今のIT業界にはなかなかいないと思う。
AIを使い倒しても、仕事は楽にならない。
むしろAIをやればやるほど、沼にハマっていく。自動化を進めているのに、結局やることは増えている。AIを使っている人なら、この感覚は分かるはずだ。
誤解のないように書いておくと、AIを使うなという話ではない。AIを使うのは必須で、もう当たり前のことだ。
問題は、AIで仕事の幅を広げた先にある。それでホワイトな会社になるかと言えば、そうはならない。AIでできることが増えると、あれもやりたい、これもやりたいと次が出てくるからだ。
AIのおかげで働く時間が4時間になった、という話は今の時点では起きていない。私の会社でも自動化やIT化を進めてはいるが、そこまでは至らない。
仮に4時間で切り上げられたとしても、それでは負けてしまう。他の会社は、AIを使いまくって10時間、20時間と試して、実験している。そこに勝てなくなる。
結局、時間は減らない。 それが今の正直な現状だ。AIを使っている会社はどこも、毎日のようにトークンと電気を使って、いろいろなものを作っている。
プロダクトで当てれば楽になる、という考えもあると思う。ただ、そんなにうまくはいかない。
1人でプロダクトを作って成功した人が多いかと言えば、全然そうではない。世界中でAIが広まっても、そういうプロダクトはまだ出てきていない。
AIを少し使えるようになっただけで、IT業界に転職するのは甘いと思う。
エンジニアを長年やってきた人でさえ、今はAIの波に飲み込まれそうになっている。そこにキャリアなしで飛び込むのは、かなり危険だ。
もちろん、可能性がゼロだとは思わない。分けるとこうなる。
自動化やビジネスそのものが大好きなら、勧めることもある。ただ、IT業界でのキャリアが何もないなら、私は絶対に勧めない。
特に受託やSESの会社は、間違いなく行かない方がいいと思っている。誰も先が見えない中で、みんなが泳ぎ続け、走り続けている世界だからだ。
一方で、AIを勉強して詳しくなった人には、別の道がある。製造業のように、AIやシステムにあまり詳しくない業界に行くことだ。
そこでは、活躍できる可能性が広いと思う。同じ知識でも、どこに持ち込むかで価値が変わる。
前に「5年後の仕事はAIでどうなるか」で、AIをコントロールできる人の市場価値は上がると書いた。その考えは今も変わっていない。
今回はその例外の話だ。IT業界の中では、AIを使えることはもう前提になっている。価値が上がるのは、その力をまだAIが入っていない業界へ持ち込んだときだと思う。
IT業界の外の方が、むしろ安泰に見えることがある。
私のお客さんの中に、ここはすごいと思った会社がある。田舎で長年やっている製造業で、半導体関連の仕事をしている会社だ。
業務はもちろん大変だ。働き方も、まあまあ大変そうに見えた。それでも、社内の環境はとても良さそうだった。
こういう会社なら、転職するのはありだと思う。
いわゆるブルーカラーの仕事も、やはりいいと正直思っている。家を建てる仕事のように、体を動かす仕事だ。
その業界のことは、私には分からない。大変なのは間違いないと思う。ただ、AIにゴリゴリ踏み込んでいる私たちから見ると、そちらの方が安泰なのではないかと感じる。
反対に、厳しいと思うのがSaaSのスタートアップだ。
私たちの会社では、受託の仕事は正直増えている。ただ、それは私たちの話で、他の企業は結構厳しいと聞く。
私が長く付き合ってきたベトナムの会社も、かなり厳しい状況になっている。展示会に出ても、きついという声が出ている。
SaaSの会社の株価も、軒並み暴落していると聞く。アドビやフィグマが危ないと言われているほどだ。
日本で特化型のSaaSをやっていて、本当に安泰な会社なら話は別だ。ただ、安泰だと思われていた場所が、もう安泰ではない気がする。資金調達してガンガン攻めるベンチャーに今行くのは、リスクが高い。
会社の業務をすべてAIに任せるのは、かなり先の話だ。
自動化に興味がある人ほど、どんどん進めていると思う。ただ、自分の業務がすべて自動化されるまでのスパンを考えると、間違いなく超長期戦になる。
たとえば経理の部分だけなら、なんだかんだ自動化できる。ここまではいい。
その後、経理以外の仕事をやろうとなる。すると結局、その人の作業が増えていく。AIを管理するのも大変だ。
優秀な人なら、こうやって管理しながら回していける。一方で、仕事を切られた人はどうなるか。私はブルーカラーの仕事に移っていくのではないかと思っている。
先日、昔からの知り合いで、人材会社を経営している社長と話をした。その社長も、Claude Codeを使って業務が劇的に変わったと言っていた。
ITの人でなくても、Claude Codeで仕事を便利にする世の中になった。そうなると、システム会社の私たちは何をすべきかを、本気で考えないといけない。
ただシステムを作るだけでは、もうダメだと思っている。
道具を渡すより先に、業務を理解することが大事だ。
最近、FDEという言葉が流行っている。お客様のところに常駐するくらいの距離で、業務をしっかり理解する。そのうえで自動化を進めるやり方だ。
私たちが力を入れるべきなのは、まさにここだと考えている。
Claude Codeのような道具は、誰でも手に入る。差がつくのは、どの業務をどう変えるかを決める部分だ。そこは道具ではなく、人と運用の話になる。
私自身、AIにかなり依存しながら進んでいる。アメリカで明日からAIが使えなくなったら、私は本当に終わると思う。
だから、ローカルでAIを組むなど、リスクヘッジも少しずつ進めている。日々の発信の編集作業も、今はAIが全部やっている。それでも楽になったとは言えないのは、ここまで書いてきた通りだ。
IT業界をキラキラに見ている人は多いと思う。AIを使っている会社も、外からは輝いて見えるかもしれない。
でも、全然キラキラではない。中にいる私が、一番伝えたいのはそこだ。転職を考えるなら、その業界で自分の何が活きるのかを先に考えてほしい。
私たちは、お客様の業務に入り込んで自動化を進める側に舵を切っている。
AIを入れても、業務を理解しないまま進めると時間ばかり増える。だから研修では、自社の業務を題材に、実際に自動化しながら進める。
個人の方には、AI駆動開発育成所もある。AIの知識を、今いる業界で活かしたい人に向いている。
社内で自動化を進めたいのに進まない。AIを使いたいのに定着しない。そんな悩みがあれば、今の業務の様子を聞かせてほしい。無料相談はこちらから気軽に連絡してほしい。
この内容は動画でも話しています: https://youtu.be/_O3BuxNzpg4
AI時代に勉強は必要か。AIに聞けば何でも答えが返る今こそ、聞く側の人間の知識が問われると思う。新聞を取り始めた私が、ネットの情報の偏り、広く浅くの知識、伝える力、子供のAI教室で見た長文を読めない現実から考えた。AI導入を進める経営者・会社員と子を持つ親向け。
AI人材の市場価値は、発信より他者評価と自動化で決まると思う。横浜でAIと詐欺のイベントを開いた元警察官の私が、参加者のほとんどがAIを使っていなかった現実から、FDE人材がいない理由と、24時間エージェントより先に今の仕事を自動化する順番を書いた。経営者・会社員向け。
5年後の仕事はAIでどうなるのか。システム開発会社を経営する私が、受注の現場で見えている変化から考えた。パソコン上の作業はほとんどAIに取られ、デスクワークの8割は消えると思う。残るのはAIをコントロールできる人だ。新卒採用や、会社が今のうちにやるべき自動化も整理した。経営者・会社員向け。