ローカルAIをいつ社内に持つべきかを考えた。AIによる人類滅亡説やクラウド漏洩の話から、Mac Studio512GBの争奪戦、オフショア開発が終わりつつある現状まで、経営者として今判断していることをまとめた。社内にAI基盤を持ちたい会社の人向け。
9月22日、埼玉は朝からずっと雨が降り続いていた。近所の池を見に行くと、普段は静かな水面が信じられない量まで増水していて、しばらく立ち尽くしてしまった。異常気象と呼ばれるものを目の前にすると、遠い話だったAIのリスクが急に身近に感じられる瞬間がある。そんな光景を見ながら、ここのところずっと気になっていた話を、今回はちゃんと言葉にしてみようと思う。AIが進化しすぎると人類は滅びるのか、という、正直あまり真剣に考えたことがなかったテーマだ。
きっかけは、イーロン・マスクやOpenAIのサム・アルトマンといった当事者たちが「これ以上開発を進めると危ない」という趣旨の発言をしている、という話を聞いたことだった。開発の最前線にいる人たちがそう言っているなら、無視できる話ではない。ただ、私自身は「AIが進化したら人類が滅びる」という主張に、正直ピンときていなかった。ハッキングで社会を混乱させる、生物兵器を作ってしまう、誤情報を流して戦争のきっかけを作る。考えられるシナリオを並べてみても、どれも単独では決定打に見えなかった。ハッキングだけで世界が滅びるわけではないし、生物兵器も隔離や対処の余地は残る。結局のところ、人間の判断そのものをAIに委ねすぎることが一番の危険因子なのではないか、というのが今のところの私の見立てだ。ロボットのハード面の進化も進んでいると聞くので、AIとロボットが噛み合ったときに人間の手を離れて何かが動き出す未来は、以前より現実味を持って想像できるようになった。実際に知り合いのエンジニアと意見交換したときも、似たような温度感だった。目の前のリスクとして語るには実感が薄く、かといって無視していい話とも思えない、その宙ぶらりんな感覚を共有できたことで、自分の考えを少し整理できた気がした。
AIによる人類滅亡の確率は10%程度らしい、という数字を聞いたことがある。10%というのは、絶対に起きないと切り捨てるには大きすぎるし、明日にも起きると身構えるには小さすぎる、扱いにくい数字だ。私はこの数字を「AIが勝手に世界を滅ぼす確率」ではなく「人間がAIに判断を委ねすぎて、取り返しのつかない選択をしてしまう確率」として捉えている。だからこそ、開発を止める側に回るという発想よりも、自分たちの手の届く範囲で判断の主導権を手放さない体制を作っておくことのほうが、今できることとして現実的だと思っている。抽象的な滅亡論を眺めているだけでは何も変わらない。自分の会社が、自分たちのデータと判断をどこまで自分の手元に残せるか。考えるべきなのはそちらの側だと私は思っている。
もう一つ、この数か月でずっと考えているのが、クラウド上の情報はすでに漏れていると言ってもいいくらいの状況になっている、という前提だ。セキュリティを気にする経営者は多いが、GoogleやAWSのサーバーに情報を置いている時点で、AIがそこに入り込めないという確証はどこにもない。だとすれば、クラウド上に置くこと自体がセキュリティ対策として成立しなくなりつつある、というのが率直な感覚だ。この話をしていて面白いと思ったのが、ブロックチェーンやNFTの技術がもう一度注目される可能性があるという予想だ。AIがメールを送れる時代になった以上、その文章を人間が送ったのかAIが送ったのかを証明する手段が必要になってくる。証明の鍵をブロックチェーン上に刻んで、本人が送ったことを示すサービスが出てくる可能性はゼロではないと私は見ている。3年後か5年後かは分からないが、AI時代に「誰が送ったか」を証明できないことは、確実にネックになってくるはずだ。こうした発想も、結局は自分の情報を自分の手元でどう守るかという、ローカルAIの話とつながっている。
クラウド依存への不安を踏まえて、今真剣に検討しているのがMac Studioの導入だ。Appleの担当者に問い合わせたところ、予約の問い合わせは相当な数に上っていて、しかもその多くが512GBメモリモデルを狙っているという。512GBモデルは10月下旬の販売がほぼ確定しているらしいが、現時点ではまだ予約すら受け付けていない状況で、発売後は争奪戦になることが予想される。価格はストレージなどを大きく積まなければ400万円前後になりそうだ。400万円は車が買える金額で、パソコン1台にそれだけ出すのは正直どうかしていると思う部分もある。それでも、一企業としてローカルにデータとAI環境を持っておく必要性を考えると、投資する価値はあると私は判断している。ただし512GBを買えばコーディングまで含めて何でもできるかというと、そんなに甘い話ではない。大きめのコーディング向けモデルをローカルで動かすには複数台の構成が必要になりそうで、そこは慎重に見極めたいところだ。実際に問い合わせの電話をかけたとき、担当者の口調からも普段とは違う切迫感が伝わってきた。在庫の確保が難しいという説明を受けながら、私はその場で導入の意思をほぼ固めた。値段だけを見れば躊躇する金額だが、情報を自社の手元に置いておける安心感は、数字だけでは測れないと感じている。
ここで大事なのは、Mac Studioという道具を買うこと自体が目的にならないようにすることだ。ローカルAIは、以前ほど高スペックなマシンでなくても動くモデルが増えてきていて、中国発のモデルの改良も速いと聞く。つまり選択肢は今後さらに広がっていく。だからこそ先に決めておくべきなのは、クラウドのAIとローカルのAIをどう組み合わせて使うか、という運用の型のほうだ。機密性の高い情報はローカルで扱い、そうでない作業はクラウドのAIを使う。この線引きを先に決めておかないと、高価な機材だけがあって使い方が定まらない状態になりかねない。アメリカと日本の関係次第でクラウドのAIが使えなくなる可能性がゼロではない、という話も出ている。ChatGPTやClaude、Geminiが当たり前に使える今の状態がずっと続く保証はどこにもない。今のうちにローカルでも運用できる環境を維持しておくことが、道具を持つこと以上に重要だと考えている。
ローカルAIの話とつながるのが、オフショア開発の現状だ。ベトナムのメンバーと一緒に仕事をしている立場から言うと、ソフトウェア開発の仕事はAIによってかなり厳しい状況に入っている。エンジニアでなくてもシステムが作れてしまう世界線が、すでに現実になりつつある。この流れの中で私が確信しているのは、ローカルAIの構築と社内データ管理を仕組みとして提供するサービスには、これから間違いなく需要が出てくるということだ。独立を考えている人やAIに詳しい人には、コーディングの受託そのものよりも、こちら側に進んだほうが生きる道になるのではないかと個人的には思っている。私たちの会社でも、単にソフトウェアを開発するだけでなく、機密性の高いAI環境を社内でどう維持していくかという部分に、これから力を入れていきたいと考えている。ベトナムのメンバーと日々やり取りする中で、AIがレビューまで肩代わりする場面が増えてきたと私は肌で感じている。数年前なら考えられなかった速度で仕様が形になっていく様子を目にするたびに、次に何を担ってもらうべきかを考えさせられる。
雨の日に考えたことをまとめると、AIが人類を滅ぼすかどうかよりも、人間がAIにどこまで判断を委ねるか、そして自分たちの情報とAI環境をどこまで自分たちの手元に残せるかのほうが、今すぐ向き合うべき課題だと私は思っている。AI駆動研究所では、こうした問題意識をそのまま研修という形にしている。社内にAIを組み込む仕組みそのものを設計するAI組織OS研修、機密性の高い情報を扱いながらAIを実務に落とし込むClaude研修、そしてオフショアに頼らずAIでコーディングを内製化していくAIコーディング研修の3つは、今回書いた課題感と特に近い内容になっている。ローカルAIの導入やクラウドとの使い分けで迷っている場合は、無料相談でも今の状況を聞かせてほしい。まずは現状を整理するところから、一緒に考えたい。
AI時代に発信が重要な理由を、1年ほど試行錯誤してきた本音で書いた。頭の中の情報は貯めるだけでは活きず、外に出してこそ自分のAIエージェントを育てる資産になる。会社のデータ化にも通じる話を、経営者や担当者向けに整理する。
AI時代に勝てる人と会社の条件を、中小企業と大企業を比較しながら整理した。中小企業はセキュリティの制約が少なく、新しいAIをすぐ試せる強みがある。個人の自動化力と浅く広い知識、そして時間の余裕が武器になる理由を、経営者としての実感から書いた。独立や自動化を考えている人向け。
AIコーディングが速くなっても人の仕事は減らない。要件を詰める作業と、AI時代の実績づくりにこそ価値が残る理由を、受託開発の現場感覚から整理する。経営者・エンジニア向け。