オフショア開発は、この1年半でAIによってほぼ壊滅した。ベトナムで4年間開発をしてきた立場から、単価や為替だけでは語れない現場の変化と、機械より先に必要になる人材の話を書いた。海外への開発委託を続けるか迷う経営者・担当者に向けて。
私は4年ほど前、ベトナムの人と一緒に会社を起業して、それからずっとベトナムのエンジニアたちとオフショア開発をやってきました。AIが出る前もあとも、ベトナムの人たちといろいろなビジネスを一緒にしている立場です。だからこそ、いまの現状をちゃんと言葉にしておきたいと思っています。正直、かなりやばいです。皆さんが想像している以上に、AIという存在がオフショア開発を壊しにきています。
オフショア開発を知らない方に説明すると、日本でシステムを作りたいお客さんに対して、ベトナムのエンジニアを使って開発する、というのがオフショア開発の大前提です。これが流行った理由は単純で、5年くらい前、コロナの頃、日本のエンジニアがとにかく少なかったからです。エンジニア転職がすごく流行った時期でもありました。そのぶん、ベトナムやフィリピン、中国には人材があふれていて、日本のエンジニアよりずっと低単価で開発できる。だから1、2年前くらいまでは、オフショア開発はかなり流行っていました。
成功する人もいれば、大失敗する人もいる。賛否両論ある開発手法でしたが、私たちはベトナムの信頼できるメンバーと組んで、結構長くやってきました。うまくいった理由は、日本人がしっかり間に入ることと、コミュニケーションを徹底したことだったと思っています。
ただ、この1年半くらいの間に、Claude Codeが出てきて、潮目がだいぶ変わりました。エンジニアの方もそうでない方も、オフショア開発で苦労した経験がある方も、きっといると思います。AIが出る前は日本でも主流だったベトナムのオフショア開発ですが、今はかなり仕事が減っています。
正直に言うと、もし私たちがAIに振り切らず、あのままオフショア開発だけを続けていたら、多分もう会社が続いていなかったと思います。仕事がなくなっていた可能性が高い。それぐらい危なかったです。
今は舵を切ってAIに振り切ったので、うちは何とかなっています。ただ、それぐらいベトナムのオフショア開発は本当にまずい状況になっています。私たちも提携していたベトナムのメンバーと、もうやりませんという形になりましたし、他の会社の話を聞いても、人材をどんどんカットしているという話ばかりです。
これは、AIで開発している方なら分かると思います。自分で作った方が、圧倒的に早いんです。もちろんAIにできない部分もありますが、わざわざ海外に任せる必要がなくなってきています。日本のエンジニアが少ないという話も前提としてありますが、AIが出てきたことで生産性が何倍にも上がったので、正直、わざわざ海外でやる理由がなくなりました。
海外に任せるデメリットのひとつが、コミュニケーションです。ここのコストがとにかく大きくて、それが失敗の原因になることも多かった。私たちも中でやっていたので分かりますが、本当に大変でした。そのコミュニケーションコストを払ってまでベトナムのエンジニアを使う理由が、今はなくなっています。加えて、円安がきつすぎて、日本でやった方が安くなってしまっている。ベトナム側にとっても、旨味がなくなっているというのが実情です。
ベトナムの人たちは、シンガポールやアメリカに行けばいいんじゃないかとも思うんですが、それも簡単ではないようです。理由のひとつは、たぶん英語圏ではないことだと思います。ベトナムの人たちは親日な方が多くて、だからこそ日本の仕事でオフショア開発が流行った側面もあったはずです。日本側の仕事がなくなると、その分きつくなる会社が多い、という状況になっています。
今の人月単価で言うと、大体35万円から40万円くらいです。日本のエンジニアが120万円くらいなので、3分の1ほどにはなります。ただ、3分の1というだけでは話が進まなくて、そこにコミュニケーションを担うブリッジエンジニアの費用が乗ってきます。それを考えると、結局コストがかさんで、日本でやった方がいいんじゃないか、という話になってしまう。オフショア開発をやる理由が、一切なくなってしまうような状況です。
私自身、ずっとベトナムの人たちとやってきたので、何か違う打開策がないか考えています。ひとつは、仕様をAIでベトナム語や英語に翻訳して渡すという方法です。多言語で仕様を渡せる世界にはなっているので、そこをうまく使えば作ってもらえるかもしれない、とは思っています。ただ確認が漏れると微妙になりますし、正直、まだ見つかっていないというのが今の現状です。もうひとつ、サーバーをベトナム側に置いた方が安いんじゃないか、向こうで電気やサーバー室を借りて日本側とつなげられないか、というのも考えました。ただ調べてみると、そこまで旨味があるわけではなさそうだ、というのが分かりました。
オフショア開発で生き残っているところも、実はあります。共通しているのは、コミュニケーションを取れる人が日本語を話せることです。技術者自身が日本語を喋れるところは、生き残っています。
多くの場合、ブリッジエンジニアという通訳のような人が間に入っていて、エンジニア自身はベトナム語しか話せません。そうすると、私が伝えたいことを通訳に伝えて、通訳がエンジニアに伝えるという、伝言ゲームのようなことが起きます。これがうまく回らないことが多い。うまくいっているところは、エンジニアに直接伝えられるようにしています。エンジニアが日本語を話せる、というのが今の唯一の生存条件に近いと感じています。
今はシステムやホームページくらいなら、余裕で作れる世界線になっていると思います。そうなると、専門的な人が必要な理由は、コードの質や、この人になら任せられるという安心感になってきます。それがオフショア開発で担保できるかというと、そうではない。昔は予算が少ないから、とりあえずオフショア開発で任せてみよう、という使われ方も多かったんですが、そういう使われ方自体がされなくなってきています。
今のオフショア開発の現状は、多くの会社が本当に倒産しているような状況になっています。コミュニケーションが取れない、ブリッジエンジニア頼りだったエンジニアは、軒並みエンジニアではない仕事をする、という話にもなってきています。ベトナムは国策として数学やソフトウェアエンジニアを育てる方針を進めていたはずですが、その国策自体が、AIの登場でだいぶ崩れてしまったんじゃないかと思っています。
じゃあロボットの方に進出できているかというと、そちらもうまくいっていません。ハード面がめちゃくちゃ強い人がいるかというと、そこも強くはなかったりします。それでも、唯一残っている生存戦略があるとすれば、ハード面、ロボティクス系、いわゆるフィジカルAIと言われるジャンルだと思っています。そこができる人がいれば、まだ生き残れる可能性があるんじゃないか。ただ、今の私が知っている人脈の中では、それが難しいのが正直なところです。この人脈を辿って、ベトナムの人たちとうまくやっていく方法を、これから考えていこうと思っています。
結局のところ、ソフトウェアの開発はもうAIにほぼ代わられていて、エンジニアでなくてもシステムを作れてしまう世界線になりました。ここで問われているのは、機械の性能そのものではありません。その機械を使って何を作るか、誰に任せられるかを決められる人がいるかどうかです。海外に振っていた開発を自分たちの手元に戻すときに、まず要るのは高性能な機械ではなく、AIで開発を進められる人、現場で実装から運用まで担える人だと私は思っています。どれだけ良い機械を持っていても、使いこなす人が社内にいなければ、意味を持ちません。
私たちLandBridgeは、この「人」の側を研修でやっています。Claude Codeなどで開発の進め方そのものを変える「AIコーディング研修」、顧客の現場でAIの実装から運用の定着まで担える人を育てる「FDE研修」。海外に頼らず、自分たちで作る側に回るために、まずこの2つが要ると私は考えています。社内の知識をAIが使える形に整える「AI組織OS研修」も、これまで海外との窓口を担っていた役割を、社内で判断できる人に置き換えていくには効くはずです。
何から手をつけるべきか判断がつかない場合は、無料相談で現状を聞かせてください。オフショア開発に代わる打開策は、正直まだ私自身も見つけきれていません。それでも、機械より先に人を育てるところからは、始められると思っています。
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