最新モデルが出るたびにAGI到達だと騒がれますが、まだ到達していません。一方で、ループ処理を積み上げれば実質的なAGIは今すぐ作れます。常時稼働のMac miniで業務を自動で回す考え方を解説します。
▼関連動画▼
AI の開発速度は落とせない ― Anthropic も OpenAI も言い出した「減速論」の裏側
▼執筆者のYouTubeチャンネル▼
AIコーディング実況 / 三森一輝(@mimo_claudecode)
まず定義を自分の言葉で持っておきたい。当社の理解では、AGIとは、AIが自分で「これをやる必要がある」と判断し、勝手に進めてくれる状態を指す。
賢さの話ではない。自律性の話である。どれだけ高度な回答ができても、動き出す判断を人間がしているなら、それは高性能な道具にすぎない。
手元のAIを思い浮かべてほしい。放っておいて、勝手に動いてくれるだろうか。
指示を出せば、驚くほど正確に動く。出さなければ何も起きない。「あなたの状況を見るとこれをやったほうがいい」と判断して自分から着手することはない。この一点だけで、まだAGIではないと言える。
性能の話とは切り離して考えたほうがいい。モデルはたしかに賢くなっている。それでも、動き出す意思の部分は空いたままだ。
新しいモデルが出ると、SNSには派手なデモが並ぶ。立体的なモデルを生成した、こんな映像ができた、という類のものだ。
正直に書くと、大半は業務と関係がない。立体モデルが生成できて、あなたの仕事のどこが楽になるだろうか。当社の業務でも、ほぼ関係しない。モデルの性能が高いことは伝わるが、そこから先に何も起きない。
性能を否定しているのではない。すごいモデルであることと、自分の役に立つことは別だという話である。
発信を見るときの基準を1つ持っておくといい。それは自分の業務のどこに効くのか、という問いだ。
答えが出ないなら、その情報は今の自分には不要である。話題に追いつくことと、仕事が楽になることは、まったく別の軸で動いている。この区別がつくと、情報に振り回される時間が一気に減る。
ここからが本題になる。鍵になるのがループという考え方だ。
多くの人は、チャットの画面で単発のやり取りをしている。こちらが命令し、AIが返す。それで終わる。人が次の指示を出すまで、何も進まない。
ループはこれと違う。条件が揃ったら自動的に動く処理をあらかじめ書いておく。この時間になったら実行する。このファイルが置かれたら実行する。前の処理が終わったら次を実行する。人が見ていない間も動き続ける。
自律的に動いているように見える状態は、この積み重ねで作れる。
大きな自動化を1つ作ろうとすると、たいてい頓挫する。現実的なのは、小さな処理をパズルのように組み上げていくやり方だ。
1つ書けば、1つ手放せる。それを何本も重ねていくと、気がついたときには自分の作業がかなり消えている。当社もこの形で進めてきた。派手さはないが、確実に効く。
具体例を挙げる。動画を撮り終えたとする。撮影したファイルを所定のフォルダに置くと、自動で編集され、公開まで進む。ここまでを一連のループとして組んでおく。
会議の議事録も同じだ。文字起こしが保存されたら、それを起点に要約が作られ、必要な場所へ配られる。当社ではすでにこの形で回っている。
対象の選び方は難しくない。毎回同じ手順でやっている作業を探せばいい。あるはずである。それこそがループの候補になる。
ループには前提条件がある。動き続ける場所が必要だということだ。
ノートパソコンでは無理がある。蓋を閉じれば落ちる。落ちないという説もあるが、実際にはだいたい止まっている。時間をきっかけに動く処理とは、根本的に噛み合わない。
当社の構成を書いておく。Mac miniを5台導入し、開発メンバーの作業用と、自動化専用の機体を分けている。そのうち2台を常時稼働させ、各種のループを走らせている。
必要なのは高性能な機材ではなく、止まらない機材である。メモリの選び方や導入の考え方は、関連記事「ローカルAIに1000万円は不要|Mac mini 1台で始める自動化」に書いた。
ループを動かすきっかけは、大きく3つに分かれる。
1つは時間。毎朝この時刻に実行する、10分ごとに確認する、といった形。2つ目は人の操作。ファイルを置く、フォルダに保存する、といった行為が引き金になる。3つ目は別の処理の完了。会議が終わって議事録が届いたら次が動く、という連鎖である。
この3つを組み合わせると、たいていの業務は形にできる。
ここを誤解しないでほしい。ループを書くのに、最新最強のモデルは要らない。
Sonnet 5クラスのモデルでも問題なく組める。当社の自動化も、特別なモデルを前提にしていない。新しいモデルを使えば効率と精度は上がるが、それは仕組みができたあとの話である。
新しいモデルが出て、触って、性能に感心して終わる人がいる。同じ時間でループを1本書いた人がいる。半年後、この2人の作業量はまったく違うものになっている。
モデルの差ではなく、書いたかどうかの差である。ここが今いちばん大きく開いている。
要点を整理する。
AGIは到達していない。指示がなければ動かない以上、まだその段階ではない
一方で、実質的なAGIと呼べる状態はループ処理の積み上げで作れる
対象は、毎回同じ手順で繰り返している作業
ループには常時稼働のマシンが要る。高性能である必要はない
最新モデルを待つ必要はない。今のモデルで十分に組める
AIがすごいという話は、もう十分に行き渡った。次に効くのは、自分の作業をどれだけ手放せるかである。1本書けば、その分の時間が戻ってくる。
AI駆動研究所では、AI駆動開発と業務自動化の導入支援、社内向けのAI研修、eラーニングを提供している。AIを導入したのに効率化した実感がない場合は、無料相談で今の使い方を聞かせてほしい。ループにできる業務は、たいてい社内にある。
AIでシステムを作れる人は増えましたが、それだけでは仕事は来ません。差がつくのは成果と、そこで得た 知恵です。飽和した市場で何を実績にし、どこを狙うべきかを、受託と自社事業を回す当社の視点で整理します。